2011年4月30日土曜日

エネルギー問題を理解するカギとしてのEPR


エネルギー問題を理解するためには、EPR(Energy Profit Ratio)ないしはEROI(Energy Return on Investment)という指標を用いて考えることが重要です。EPRもEROIも、同じ概念ですので、以下EPRを使用することにします。

私たちは、「エネルギーを(自然界から)取り出す技術」は持っていても、未だ「エネルギーを生み出す技術」は手にしていません。私たちが今使っているエネルギーは、すべて、何らかの形で「自然界から取りだした」エネルギーです。

自然界からエネルギーを取り出すためには、エネルギーが必要です。初期の陸上油田であれば、「穴を掘るエネルギー」が必要です。カナダにあるようなオイルサンドから原油を取り出すためには、水蒸気(淡水+天然ガスで生成)が大量に必要になります。これが「投入エネルギー」(Ein)です。

投入エネルギーを用いて回収されたエネルギーは、「回収エネルギー」(Eout)として表されます。

私たちは継続的にエネルギーを取り出すために、「回収エネルギー」をすべて社会で使うことはできません。次の「投入エネルギー」を残しておく必要があります。

したがって、「社会が使える余剰(正味)エネルギー」(Enet)は、「Eout − Ein」となります。

EPRとは、こうした一連のプロセスを念頭において、どの程度エネルギー効率が良いのか(または悪いのか)を知るための指標です。求め方は、「回収エネルギー(Eout)÷ 投入エネルギー(Ein)」という単純な割り算によって得られます。

つまり、1リットル分の石油を使って、100リットル分の石油を取り出すことができれば、EPRは、「100÷1=100」となり、EPR=100となります。

同様に、100リットルの石油を取り出すことが可能だけれども、産出にエネルギーがかかり、50リットル分の石油を使わなければ取り出せないような資源があったとすると、EPRは、「100÷50=2」であり、EPR=2となります。

同じ100リットルを取りだしても、両者はエネルギー的に持っている意味が異なるということです。だから、どれだけの「量」がとれるのかというのは、あまり本質的な問題ではなく、「どうやってその量を確保したのか」という「エネルギーの質」の方が重要なのです。

問題は、EPRが「1以下」になるような場合です。つまり、100リットル分の石油を取るのに「深追い」をしてしまい200リットル分の石油を使ってしまったら、EPRは、「100÷200=0.5」であり、EPR=0.5となってしまいます。こうなってしまっては、もはや取りだしたエネルギーにエネルギーとしての価値はなくなります。

「量」ではなく「質」である。エネルギー政策論を考える場合には、必ず考慮に含めなくてはいけない指標、それがEPRなのです。