2011年4月30日土曜日

石油会社トップ、石油ピークを認める!


ブラジルの国営石油会社「ペトロブラス」(Petrobras)のCEOガブリエリ氏は、2009年12月に行われたプレゼンテーションにおいて、上の図を示し、世界の石油供給のピークは2010年だろうという認識を示しました。

これまで石油業界は、自らの利益を守るためか、パニックを起こさせないようにするためか、概して石油供給について楽観的な見通しを示し続けてきました。そんな中、産油国であるブラジルの国営石油会社のトップが自ら、「石油ピーク」に言及し、それを認めるような発言をしたことは大いに注目されます。本音が垣間見られた、ということなのでしょう。

上の図が示すように、世界の石油供給量は右肩下がりに下がっていくことが予想されています。他方、この図の中で右肩上がりに延びている線は、今後見込まれる世界の石油需要量です。

今、中国やインドといった新興国は、急速に石油消費量を拡大させています。こうした需要を供給側が満たせなくなると、そこに需給のギャップ(乖離)が起こります。これは、かつて人類が経験したことのない現象です。そして、これこそが、いわゆる「石油ピーク問題」です。

ペトロブラスのトップ、ガブリエリCEOがこうした認識にいたった背景は、以下の図に集約されています。


この図は、世界中の既存油田が毎年どの程度「減退」しているのかを示した棒グラフです。横の赤線は、世界最大の産油国サウジアラビアの原油生産量(2008年)を示しています。

この図から得られる彼の結論は、「原油生産の減退を補うためには、2年ごとに"新しいサウジアラビア"を発見しなくてはならない」というものであります。さらに、新興国の需要を満たすためには、それ以上の油田を発見しなくてはいけません。

「これは実質的には不可能だ」というのが彼の結論です。したがって、全世界の石油供給のピークは、2010年だろうという認識にいたったわけです。

この種の見解は、日本のメディアで取りあげられることはあまりありません。しかしながら、こうした事態は現在進行形で起こっているのです。この難問に、どう対処していくべきか。政策担当者は、真剣に考えなくてはならない、と言えるでしょう。