2011年4月30日土曜日

国際エネルギー機関が在来型石油の産出ピークは2006年だったと報告

(出典)International Energy Agency, World Energy Outlook 2010, International Energy Agency, 2010, p.122に一部加筆。

国際エネルギー機関(IEA)は、毎年、『世界エネルギー展望』(World Energy Outlook)と呼ばれる報告書を発行しています。上の図は、最新版である2010年度の報告書に掲載されたものです。

国際エネルギー機関は、これまで「石油ピーク」に対して「楽観的」な見解を示し続けてきましたが、ここ数年、徐々に厳しいものに変わりつつありました。より現実に即した見解を示すようになってきていたのです。

そして、2010年。これまで「石油ピーク」に対して否定的であった国際エネルギー機関が、自ら、「在来型石油の生産ピークは2006年だった」と発表したのです。「過去形」の表現が使われました。

ピークが訪れるということは、その後は減退していくということです。そこで生まれる需給ギャップは、「非在来型石油」を中心に埋めていくことになります。

しかしながら、「非在来型石油」は、EPR(Energy Profit Ratio:エネルギー利益率)が、「在来型石油」に比べて極めて低いのが特徴です。つまり、取り出すためにかかるエネルギーが極めて大きい、エネルギー的に非効率な資源だということです。

考えてみてください。初期の油田は、陸上で穴を掘れば、そこから勢いよく自噴してきました。穴を掘るだけのエネルギーで、大量の原油を取り出すことができたわけです。

今では、こうした油田に比べると極めて小規模の油田に対して、「深海」や「極地」で、膨大なエネルギーを使いながら取りだしています。カナダのオイルサンドなどから原油を取り出すにに際しても、大量の水蒸気(貴重な淡水+天然ガスで生成)が必要です。

これまで私たちの社会を、文明を支えてきたような石油とは、比べものにならないくらい「取り出しにくい」(取り出すのにより多くのエネルギーが必要な)資源に頼っていくということでもあります。

このことが、国家のそして、地方の、コミュニティのエネルギー政策にどのような意味を持つのか、真剣に考えておかなくては「手遅れ」になる可能性があると言えるでしょう。