2011年5月3日火曜日

アメリカ軍による石油供給予測



2010年度の、アメリカ軍の統合戦力軍(US Joint Forces Command)による報告書『統合作戦環境報告』(The Joint Environment Report 2010)では、「石油ピーク論」を裏付けるような言及がなされています。

報告書の中で、「2012年までに石油生産の余剰能力は全くなくなり、2015年には日産1000万バレルの供給不足に陥るだろう」(同レポート、29頁)と述べられているのです。

この石油供給に関する展望は、「石油ピーク論」を主張してきた研究者たちの見解とほぼ同一のものです。これまで通り、右肩上がりに石油の供給量が増え続ける時代は終わったのだ、という認識です。

エネルギーの専門家にとって、こうした見解はかねてから主張されてきたことであり、特段目新しいものではありませんが、これまで石油の将来予測について極めて楽観的な姿勢をとり続けてきたアメリカの政府機関である軍のレポートでこうした認識が明示されたということは特筆に値する出来事だと言えるでしょう。

アメリカは「知らない」から楽観的なのではなく、「知っていて」その上で「確信犯として」あえて楽観的な見解を示している(示してきた)と解釈するべきです。「本音」と「建前」をきちんと使い分けているのです。

「建前」や「公式見解」のみをベースに思考を組み立てていく危うさが、このレポートの何気ない一行にも見え隠れしています。知っている人は、きちんと知っているのです。